ウェッジウッド「ジャスパー」とは | 食器・ブランド食器買取「お董姫TOKYO」

概要

「ジャスパー」はウェッジウッドが誇る代表的なシリーズの一つです。その歴史は古く、発売は1770年代までさかのぼります。発売からすぐに高い人気となり、現在に至るまでの長い期間生産・販売されています。限定品や廃盤品も多く、アンティーク品もわずかに残されています。

ジャスパーは、ウェッジウッドの創業者であるジョサイア・ウェッジウッドが完成させたストーンウェア（炻器製・石のように固い器）です。宝石のような美しさを持つ焼き物を夢見たジョサイアが、4年間で一万回以上の研究と実験を重ね、1775年にようやく完成に至りました。ストーンウェアは釉薬をかけて焼くことが多いのですが、ジャスパーは特殊で、釉薬を使用せずに仕上げているため、ほかの食器にはない独特なマットな質感をもっています。ジャスパーの素材自体は、水分を吸収しにくく、匂いや汚れにも強く、高温で焼いているので熱にも強い焼き物となっています。

ジャスパーに施された優美で細やかなレリーフの模様は、古代ギリシャやローマの装飾模様をモチーフにしたネオクラシカル様式が使われています。ジャスパーが誕生した18世紀はボンペイ遺跡の発掘が進められていて、人々の関心が古代ギリシャやローマ時代のものに向いていました。その流行をいち早く感じ取ったジョサイア・ウェッジウッドは、ジャスパーにネオクラシカル様式のレリーフを施し、上流階級の人たちの間で「装飾用の焼き物」として地位を築いていくことに成功しました。

ジャスパーの中でも有名な作品として、「ポートランドの壷」があります。オリジナルは西暦25年ころに古代ローマで作られたカメオガラスの作品で、1790年にジョサイアがジャスパーの技法で再現しました。
ジョサイアはこの壺の素晴らしさを知り合いより聞かされており、ジャスパーで模倣したいと考えていたので、この作品を1年間借り受け、数年の歳月をかけてようやく40点ほどのジャスパー製のポートランドの壺を完成させました。安定感のある器形、精巧なカメオ装飾、黒と白のすっきりとした色使いなど、模倣するには高度な技術を要求されましたが、ジョサイアの研究の成果によってオリジナルに近い完成度の高い作品が作られました。ジョサイアが作ったポートランドの壺の完成度の高さは、オリジナルのガラス製「ポートランドの壺」が粉々に破損した折に、ウェッジウッドのポートランドの壺を参考にして修復したという逸話があるほどです。現在では二つのポートランドの壺が大英博物館の同じ部屋で展示されています。

ジャスパーはカップ＆ソーサーやプレート、ティーポットのような食器をはじめとして、ふたつきの小物入れ、灰皿、花瓶、写真立て、ブローチなど様々なアイテムが作り出されてきました。クリスマスには毎年記念プレートがつくられています。ジャスパーは独自の質感からインテリアなどの調度品のようなイメージがありますが、実用食器として使うことももちろん可能です。使う度に風合いが増していくのも、ジャスパーの魅力のひとつです。近年では、ジャスパーのレリーフにひな人形や端午の節句の兜をあしらったものもあります。