萩焼の魅力に迫る!歴史や特徴を解説します

食卓にそっと寄り添うような、温かみのある風合いを持つ萩焼。400年以上の歴史を持つ萩焼は、萩の地で育まれた伝統の焼き物です。柔らかなピンクや白の釉薬(うわぐすり)が独特の風情を醸し出し、お茶を注ぐたびに、器の表情が少しずつ変化していく「萩の七化け」は、使うほどに愛着が湧く不思議な魅力を持っています。この記事では、萩焼の歴史や特徴、独特な魅力について解説します。

萩焼の歴史

萩焼の魅力を語るには、その豊かな歴史を知ることが欠かせません。萩焼は、その歴史の中でさまざまな人々の手に支えられ、現代まで受け継がれてきた貴重な文化遺産です。ここでは、萩焼がどのようにして生まれ、発展してきたのかを見ていきましょう。

萩焼のルーツ:朝鮮陶工と毛利藩の出会い

萩焼の起源は16世紀末、文禄・慶長の役(1592年 – 1598年)に遡ります。この戦役において、日本へ連れてこられた朝鮮の陶工たちの中に、後に萩焼の祖となる李勺光(り しゃっこう)、李敬(り けい)兄弟がいました。彼らは山口県萩市の地に移り住み、そこでその卓越した陶器作りの技術を活かし始めたのが萩焼の始まりです。彼らは地元の土と朝鮮伝来の技術を融合させ、新しい焼き物文化を開花させました。このように、異文化の交流が萩焼の誕生に大きな役割を果たしました。

御用窯の開設:萩藩による保護と発展

1600年の関ヶ原の戦いの後、毛利輝元は居城を安芸の広島から萩へと移しました。1604年、輝元は萩の松本村に御用窯を開設し、萩焼は毛利藩の保護を受けるようになります。これにより、萩焼は藩主のための茶器や贈答品として用いられるようになり、その技術やデザインは大いに進化を遂げました。この時期に、現在の萩焼の基盤となる技術と美意識が確立されたといわれています。

「一楽二萩三唐津」:茶人たちに愛された萩焼

江戸時代中期以降、萩焼はその落ち着いた色合いや素朴な美しさから、茶人たちに愛されるようになります。「一楽二萩三唐津」という言葉が生まれたことからも、萩焼が茶道具として高く評価されていたことが分かります。この頃には、より洗練された作風へと変化し、侘び寂びの精神を体現するような、静かで落ち着いた雰囲気を備えた作品が多く見られるようになりました。

近代〜現代:伝統と革新の融合

明治維新以降、藩の庇護を失い一時衰退しましたが、その後、多くの陶芸家たちの努力によって復興を遂げました。特に、人間国宝である三輪休雪(三輪壽雪)は、萩焼の近代化に大きく貢献しました。彼の代表作である白萩は、白く柔らかな釉薬が特徴で、萩焼の新たな可能性を示しました。三輪休雪は、伝統的な技法を踏まえながらも、現代的な感性を取り入れた作風で、多くの人々を魅了しました。彼の功績により、萩焼は再び注目を集め、現代にまでその伝統が受け継がれています。現代では、伝統的な技法を継承しつつ、現代アートの要素を取り入れたり、新しい釉薬や技法を開発したりする若手作家も登場しており、萩焼は多様な表現を生み出しています。

萩焼の特徴

萩焼の魅力をさらに深く知るには、その特徴を理解する必要があります。萩焼が持つ独自の美しさや、長年使い続けることで味わえる変化の魅力について、詳しく見ていきましょう。

「萩の七化け」「貫入」:使うほどに変化する表情

萩焼の最大の特徴は、「萩の七化け」と呼ばれる経年変化と、表面に現れる細かなひび割れ「貫入(かんにゅう)」です。これらは密接に関連しており、萩焼ならではの味わいを深める要素となっています。

萩焼は、地元山口県で採れる、柔らかく吸水性の高い土(胎土)を使用しています。この土と、釉薬(うわぐすり)と呼ばれるガラス質の膜を焼き付ける際に、土と釉薬の収縮率の違いによって、表面に細かなひび割れが生じます。これが「貫入」です。

この貫入に、お茶や酒などの液体が染み込むことで、器の色や質感が変化していきます。例えば、白い萩焼の茶碗に緑茶を注ぎ続けると、貫入に茶渋が染み込み、徐々に淡い茶色へと変化していきます。また、長年使用することで、釉薬の下から独特の模様が浮かび上がったり、器全体の色味が深みを増したりすることもあります。さらに、お酒を注ぐことで、香りが染み込み、より芳醇な香りを楽しむことができるとも言われています。

この変化は、萩焼を使う楽しみのひとつであり、使用者にとって自分だけの器としての愛着を育む要素となっています。使い込むほどに変化していく様は、「萩の七化け」と呼ばれ、多くの人々を魅了しています。

土と釉薬:萩焼ならではの素材と製法

萩焼の柔らかな手触りと温かみのある色合いは、地元山口県で採れる独特な土と釉薬によって生み出されています。特に、萩の土は、大道土(おおみちつち)や金峯土(みたけつち)など、柔らかく吸水性の高い土が使われています。これらの土は、鉄分を多く含み、焼成することで独特の色合いを生み出します。

また、釉薬には、藁灰(わらばい)釉や長石(ちょうせき)釉など、シンプルでありながら深みのある配合が用いられ、器全体に自然な色彩と質感を与えています。これらの釉薬は、焼成時の炎の影響を受けやすく、窯ごとに異なる表情を見せるのも特徴です。

萩焼は、これらの土と釉薬を使い、蹴轆轤(けろくろ)や手びねりなどの伝統的な技法を用いて成形され、登り窯などで焼成されます。この製法によって、萩焼特有の温かみを感じさせる仕上がりを可能にしているのです。

萩焼の評価:「一楽二萩三唐津」の意味

茶道界では、「一楽二萩三唐津」という言葉が広く知られています。この言葉は、江戸時代中期以降に生まれたと言われており、茶碗の名品として「楽焼」「萩焼」「唐津焼」を格付けしたものです。

この中で萩焼は、その落ち着いた色調と控えめな佇まいで、「侘び寂び(わびさび)」の精神を体現するものとして、特に茶人たちから高い評価を受けてきました。「侘び寂び」とは、簡素なものの中に美を見出す、日本の美意識の一つです。

こうした評価が、萩焼を日本を代表する伝統工芸品のひとつへと押し上げた要因でもあります。

代表的な窯元と作家

萩焼の伝統を受け継ぎながら、現代にもその魅力を広めている窯元や作家たちの存在は欠かせません。彼らの努力と創意工夫が、萩焼の価値をさらに高めています。ここでは、特に注目すべき窯元や作家について詳しくご紹介します。

代表的な窯元紹介

萩焼の歴史を支えてきた多くの窯元の中から、特に代表的な窯元をいくつかご紹介します。

坂窯(さかがま)

萩焼の中でも古い歴史を持つ窯元のひとつで、萩焼のルーツとも言われています。伝統的な蹴轆轤(けろくろ)を用いた作陶を続け、素朴で力強い作風が特徴です。特に、初期の萩焼に見られる高麗茶碗の影響を残す作品は、骨董品としても高い価値を持っています。

大屋窯(おおやがま)

比較的新しい窯元ですが、現代的な感性を取り入れた作風で、若い世代を中心に人気を集めています。伝統的な技法を大切にしながらも、新しい釉薬やデザインに挑戦しており、萩焼の新たな可能性を拓いています。

深川窯(ふかがわがま)

江戸時代初期の古萩と呼ばれる作風を今に伝える貴重な窯元です。素朴で力強い初期の萩焼の面影を残す作品は、骨董的価値も高く、茶人からも珍重されています。

作家紹介

萩焼の歴史を彩ってきた数多くの作家の中から、特に重要な作家をいくつかご紹介します。

初代 三輪休雪(三輪壽雪)(みわ きゅうせつ)

人間国宝。白萩の創始者として知られ、萩焼の近代化に大きく貢献しました。白く柔らかな釉薬を用いた作品は、多くの人々を魅了し、現代の萩焼に大きな影響を与えています。彼の作品は、国内外の美術館に所蔵されており、骨董品としても非常に高い価値を持っています。

十一代 三輪休雪(三輪和彦)(みわ かずひこ)

先代の技を受け継ぎながら、現代的な感性を取り入れた作風で注目を集めています。伝統的な萩焼の技法を大切にしながらも、新しい表現を追求し、萩焼の可能性を広げています。

岡田裕(おかだ ゆたか)

現代萩焼を代表する作家の一人。独自の表現を追求し、国内外で高い評価を得ています。土の質感を生かした力強い作風が特徴で、現代アートの要素を取り入れた作品も制作しています。

萩焼の種類と用途

萩焼は、その用途や種類に応じてさまざまな魅力を持ち、それぞれに異なる楽しみ方が存在します。この章では、代表的な種類と特徴を通して、萩焼が持つ多彩な表情をご紹介します。

茶碗:侘び寂びの世界を表現する

茶碗は、萩焼を語る上で欠かせない存在です。その柔らかな土と釉薬が生む温かみのある質感は、茶道の侘び寂びの精神と深く結びついています。萩焼の茶碗には、抹茶をいただくための抹茶茶碗と、煎茶をいただくための煎茶茶碗があります。抹茶茶碗は、茶筅で抹茶を点てやすいように、口が広く、胴が深い形状をしているのが特徴です。一方、煎茶茶碗は、抹茶茶碗に比べて小ぶりで、口がやや狭くなっています。

萩焼の茶碗は、初期には高麗茶碗の影響を受け、素朴で力強い作風が特徴でしたが、時代を経て、より洗練された、侘び寂びの精神を体現するような作風へと変化していきました。使い込むほどに「萩の七化け」と呼ばれる経年変化が現れ、茶の味わいや見た目をさらに引き立てます。茶席での使用はもちろん、現代ではインテリアとしても人気を集めています。

ぐい呑み:お酒の味を引き立てる

萩焼のぐい呑みは、その持ちやすい形状と自然な風合いが特徴です。釉薬がもたらす微妙な色合いや手触りは、飲む人に五感で日本酒を楽しませてくれます。ぐい呑みには、筒型や平盃など、さまざまな形状があり、それぞれに異なる特徴を持っています。筒型は、お酒の香りを閉じ込めやすく、吟醸酒など香りの高いお酒に適しています。一方、平盃は、お酒の色や景色を楽しむのに適しており、熱燗など温度の高いお酒にも適しています。

特に冷酒や熱燗と相性が良く、酒の香りや味わいを引き立てるアイテムとして愛用されています。

花器:花のある暮らしを豊かに彩る

萩焼の花器は、その素朴で落ち着いたデザインが花の美しさを際立たせます。萩焼の花器には、壺、花生け、一輪挿しなど、さまざまな形状があり、活ける花の種類や空間に合わせて選ぶことができます。例えば、壺は、枝ぶりの大きな花や、ボリュームのある花束を活けるのに適しています。一方、一輪挿しは、野の花や季節の草花などをさりげなく飾るのに適しています。

特に和室との相性が良く、花を活けることで空間に一層の和の趣を加えます。また、現代的なインテリアにも溶け込むシンプルなデザインの花器も多く、和洋問わず幅広い場面で活躍します。

食器:日々の食卓に温もりを添える

日常使いの食器としても、萩焼は多くの人々に親しまれています。皿や鉢、湯呑み、飯碗など、さまざまな種類があり、料理を引き立てる優れたデザイン性が特徴です。例えば、皿は、メイン料理や取り皿として、鉢は、煮物やサラダなどを盛り付けるのに適しています。湯呑みは、温かいお茶や白湯などを飲むのに適しており、飯碗は、ご飯を美味しくいただくための形状や大きさに工夫が凝らされています。

柔らかい色合いや手触りは、食事の時間をより豊かで温かなものにしてくれます。萩焼の食器は特別な日の食卓だけでなく、普段の食事にも使いやすい実用性を備えています。

現代の萩焼:伝統と革新の融合

伝統的な萩焼の技法を基盤としながら、現代の生活様式に合ったデザインや用途を追求した作品も増えています。たとえば、従来の萩焼には見られなかった鮮やかな色彩を用いたカップやプレート、現代的なインテリアに調和するオブジェ、異素材(ガラスや金属など)と組み合わせた作品など、新しい表現が生まれています。また、若い世代の作家を中心に、海外のアーティストとの交流や、異分野(デザイン、建築など)とのコラボレーションも積極的に行われており、萩焼の新たな可能性を示しています。

萩焼の使い方とお手入れ

萩焼を楽しむためには、適切な使い方とお手入れが大切です。長年愛用するためには、少しの手間をかけて、器を育てる楽しみも感じることができます。この章では、萩焼の扱い方や長く愛用するためのコツをお伝えします。

萩焼の使い方

萩焼はその温かみのある色合いと手触りから、茶器として非常に人気があります。特に、茶碗や急須はその風合いが茶の味わいを引き立て、お茶の時間をより一層特別なものにしてくれます。温かいお茶を注ぐことで、萩焼はその持ち主の手に馴染み、さらに美しさを増します。萩焼の茶碗でお茶をいただく際には、器の温度も大切です。温かいお茶が入った状態の器を手に取ることで、手触りや香りも一層楽しむことができます。

また、萩焼は茶器としてだけでなく、日常の食卓でも活躍します。料理を盛り付けることで、料理の色合いを引き立て、食卓を華やかに彩ります。特に、和食との相性が良く、煮物や和え物などを盛り付けると、料理の風味がより一層引き立ちます。また、ぐい呑みや徳利などの酒器として使用することで、お酒の味をまろやかにし、より美味しくいただくことができます。花瓶として使用すれば、草花が持つ自然の美しさを引き立て、お部屋の雰囲気を和やかに演出します。

このように、萩焼は様々なシーンで活用でき、日々の暮らしに豊かな彩りを与えてくれます。

萩焼のお手入れ:長く大切に使うために

萩焼は使うほどにその味わいが増していく陶器ですが、長く大切に使うためには適切なお手入れが欠かせません。以下に、萩焼のお手入れ方法をご紹介します。

お手入れの手順

  1. 使用後は、ぬるま湯で軽く洗い流します。
  2. 柔らかいスポンジに中性洗剤を少量つけ、優しく洗います。研磨剤入りの洗剤や硬いスポンジの使用は避けましょう。
  3. すすぎは十分に行い、洗剤が残らないようにします。
  4. 柔らかい布で丁寧に水分を拭き取ります。
  5. 風通しの良い場所で十分に乾燥させてから保管します。

特に注意すべき点

  • 浸け置き洗いは避けてください。水分が陶器に染み込み、ひび割れの原因になることがあります。
  • 電子レンジや食洗機の使用は避けてください。急な温度変化によってひび割れや破損の原因になることがあります。
  • 金物や硬いものとぶつけないように注意してください。欠けや傷の原因になることがあります。
  • カビを防ぐため、十分に乾燥させてから保管してください。

萩焼を育てる:経年変化を楽しむ

萩焼の魅力は、使い込むことでその色味や質感が変化し、時間とともに“育てる”楽しみが味わえる点にあります。最初は淡い色合いから始まり、使用を重ねるごとに器に温かみが増し、色が深みを帯びていきます。このような経年変化を楽しむことこそが、萩焼の最大の魅力です。

特に、茶碗では、お茶を注ぐことで貫入に茶渋が染み込み、徐々に色合いが変化していきます。最初は白かった茶碗が、使い込むうちに淡いベージュ色になり、さらに年月を経ると、深みのある茶色へと変化していくこともあります。また、急須では、内側が徐々に色づいていく様子も、長年使い込むことで独特の味わいが出る部分です。この変化を大切に育んでいくことが、萩焼を持ち続ける楽しみの一つです。

まとめ

萩焼は、その温もりあふれる質感と、使い込むほどに変化する「萩の七化け」が魅力の陶器です。400年以上の歴史と文化が息づく萩焼は、茶道具としてだけでなく、日々の食卓や暮らしを彩る器としても親しまれてきました。

手に取るたびに感じる土の温もり、使うほどに深まる味わい。萩焼は、まさに「育てる」という言葉がふさわしい器です。歴史と文化の深みを感じながら、萩焼とともに豊かな時間をお過ごしください。

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